アカデミー賞を受賞したホラー映画の一覧です。歴代のオスカー受賞歴。「羊たちの沈黙」作品賞、「エクソシスト」脚色賞、「ゲット・アウト」脚本賞など。(プレナス×Eizohホラー映画勉強会)
| 年 | 部門 | 作品 |
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| 2026 | 主演男優賞、 脚本賞、 撮影賞、 作曲賞 |
「罪人(つみびと)たち」 |
ライアン・クーグラー監督・脚本、マイケル・B・ジョーダン主演。1932年のミシシッピ・デルタを舞台に、双子の兄弟が故郷で超自然的な悪(吸血鬼)と対峙するゴシック・ホラー。第98回アカデミー賞において、映画史上最多記録となる「16部門ノミネート」という前人未到の金字塔を打ち立てた。
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| 2026 | 助演女優賞 | 「ウェポンズ」 |
『バーバリアン』のザック・クレッガー監督による、重厚な超自然的ミステリー・ホラー。ペンシルベニア州の町で、同じクラスの子供たち17人が午前2時17分に一斉に失踪するという衝撃的な事件を軸に、コミュニティに潜む狂気と魔術の連鎖を描き出す。
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| 2025 | メイク&ヘア賞 | 「サブスタンス」 |
若さと美貌への異常な執着が招く悲劇を描いた衝撃のボディ・ホラー。第97回アカデミー賞にて、ホラー映画として史上3本目となる作品賞ノミネートという歴史的快挙を達成。主演のデミ・ムーアがキャリア最高の怪演を見せ、観客に強烈な不快感とカタルシスを与えた1作。
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| 2018 | 脚本賞 | 「ゲット・アウト」 |
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現代の社会問題を「恐怖」へと昇華させた「ソーシャル・スリラー」として高く評価。第90回アカデミー賞にて、ホラー映画としては極めて稀な主要4部門(作品・監督・主演男優・脚本)にノミネートされ、見事に脚本賞を受賞した。ジョーダン・ピールの長編監督デビュー作にして、映画史に新たなジャンルを刻んだ1作。
低予算での制作ながら、全米を中心に社会現象を巻き起こす爆発的なヒットを記録。人種差別という重いテーマを、独創的なアイデアと緊密なサスペンスとして描き切り、世界中の批評家から絶賛を浴びた。 主演のダニエル・カルーヤが見せた「涙を流しながら見つめる」演技は、本作の象徴的なイメージとして語り継がれている。結末に向けた巧妙な伏線回収と、静かに、しかし確実に忍び寄る「違和感」の演出は、観客を深い恐怖と考察の渦へと引き込んだ。 本作の成功により、社会風刺を込めたホラー映画の価値が再定義され、その後の映画界に多大な影響を与えた。ジャンルの壁を打ち破り、アカデミー賞の主要部門で正面からその芸術性が認められた、21世紀を代表する重要作。 <ノミネート部門(★は受賞)> ・作品賞 ・監督賞(ジョーダン・ピール) ・主演男優賞(ダニエル・カルーヤ) ★脚本賞(ジョーダン・ピール) |
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| 1993 | 衣裳デザイン賞、 メイク賞、 音響効果賞 |
「ドラキュラ」 |
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フランシス・フォード・コッポラ監督が手掛けた、ゴシック・ホラーの最高峰。アイルランドの作家ブラム・ストーカーの原作を忠実に映画化した。世界的に活躍した日本人デザイナー・石岡瑛子による芸術的な衣装が、アカデミー衣裳デザイン賞を受賞した歴史的作品。
石岡が手掛けた衣装は、単なる「衣服」の域を超え、映画の物語やキャラクターの心理を象徴する重要な役割を担った。特にドラキュラ伯爵(ゲイリー・オールドマン)の深紅のローブや、花嫁たちの神秘的な装いは、現在も多くのクリエイターに影響を与え続けている。 特殊メイクや音響効果も高く評価され、合計3部門でオスカーを獲得。CGに頼りすぎず、あえて古典的な特撮技法や豪華なセットを用いることで、19世紀末の退廃的で美しい世界観を見事に再現した。 恐怖の中にも官能的な美しさを湛えた、映像美の極致とも言える1作。ジャンル映画の枠を超えた圧倒的な芸術性が認められ、技術部門を席巻した。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★衣裳デザイン賞(石岡瑛子) ★メイクアップ賞 ★音響効果編集賞 ・美術賞 |
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| 1992 | 作品賞、 監督賞、 主演男優賞、 主演女優賞、 脚色賞 |
「羊たちの沈黙」 |
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ホラー映画として史上初めて作品賞に輝いた。主要5部門(作品・監督・主演男優・主演女優・脚色)を完全独占する「ビッグ・ファイブ」を達成。怪物ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)が放つ静かなる狂気と、若きFBI実習生クラリス(ジョディ・フォスター)の孤独な闘争を緊密に描いた。ホラー映画に対する過小評価を根底から覆した不朽の金字塔。
トマス・ハリスの同名小説が原作。公開直後から爆発的なヒットを記録し、世界興行収入は2億7200万ドルを超える大成功を収めた。 特筆すべきはその公開時期。アカデミー賞候補作は年末に公開されるのが定石だったが、本作は異例の2月に公開。そこから丸1年間にわたって圧倒的な熱狂と評価を維持し続け、翌年の授賞式で最高賞を射止めた。 狂人レクターを演じたアンソニー・ホプキンスの出演時間は全編を通してわずか16分程度。しかし、その一瞬で観客の心を支配する強烈な存在感により、主演男優賞を勝ち取った事実は今もなお語り草。 その後も「ハンニバル」や「レッド・ドラゴン」などの続編や前日譚が制作され、レクター博士はホラー映画史上、最も恐ろしくも魅力的なアイコンとして君臨し続けている。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★作品賞 ★監督賞(ジョナサン・デミ) ★主演男優賞(アンソニー・ホプキンス) ★主演女優賞(ジョディ・フォスター) ★脚色賞(テッド・タリー) ・編集賞 ・音響賞 |
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| 1991 | 主演女優賞 | 「ミザリー」 |
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スティーヴン・キングの同名ベストセラー小説を、ロブ・ライナー監督が完璧に映画化した心理ホラーの傑作。憧れの作家を監禁し、狂気的な執着を見せる「1番のファン」アニーを演じたキャシー・ベイツの演技が凄まじく、主演女優賞を受賞。キング原作映画に初のオスカー演技賞をもたらした。
雪山のロッジという閉鎖空間の中で、身動きの取れない作家が味わう極限の恐怖を緊密な演出で描写。静かな語り口から一変して爆発するアニーの狂気は、観客に拭い去れない衝撃を与えた。特に、作家の逃走を阻むために行われる凄惨なシーンは、映画史に残る恐怖の瞬間として語り継がれている。 派手な特殊効果に頼らず、俳優の表情と台詞回しだけで人間の心の深淵を覗かせた本作は、ジャンル映画の枠を超えた高い芸術性を証明。キャシー・ベイツはこの1作で、ホラー映画史上最も恐ろしく、かつ悲哀に満ちたキャラクター像を確立した。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★主演女優賞(キャシー・ベイツ) |
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| 1987 | メイクアップ賞 | 「ザ・フライ」 |
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デヴィッド・クローネンバーグ監督が放つ、肉体変幻ホラーの最高傑作。1958年の『ハエ男の恐怖』を現代的な視点で再構築した。物質転送実験の事故により、徐々にハエへと変貌していく科学者の悲劇をおぞましく、かつ哀切に描いた1作。
最大の見どころは、クリス・ウェイラスらが手掛けた凄まじい特殊メイク。人間が崩壊し、異形の怪物へと成り果てていく過程を、当時最先端の技術でリアルに表現した。その独創的でグロテスクな造形は、第59回アカデミー賞にてメイクアップ賞を受賞。 主演のジェフ・ゴールドブラムによる、自身の肉体が失われていく恐怖と狂気に満ちた演技も絶賛を浴びた。単なるホラー映画の枠を超え、愛する者が変貌していく悲しみを描いた切ないラブロマンスとしての側面も持ち、今なおクローネンバーグの代表作として君臨している。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★メイクアップ賞 |
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| 1977 | 作曲賞 | 「オーメン」 |
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「6月6日6時」に誕生した悪魔の子ダミアンを巡る、オカルト・ホラーの金字塔。リチャード・ドナー監督が手掛け、名優グレゴリー・ペックが主演を務めた。巨匠ジェリー・ゴールドスミスによる不気味で荘厳な劇伴が評価され、作曲賞を受賞した。
本作の恐怖を決定づけたのは、黒ミサを思わせる不穏なコーラスが印象的なメインテーマ「アヴェ・サターニ(悪魔に幸あれ)」。この楽曲は歌曲賞にもノミネートされ、映画音楽史に残る衝撃を与えた。姿なき悪魔の存在を、音楽という「聴覚的な恐怖」で表現し切った功績は極めて大きい。 ダミアンの周囲で次々と起こる、計算し尽くされた残酷な事故の数々は、後のホラー映画の演出に多大な影響を与えた。重厚なドラマ性と、宗教的な背景を持つ知的な恐怖が融合した本作は、1970年代のオカルト・ブームを象徴する1作として今も語り継がれている。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★作曲賞(ジェリー・ゴールドスミス) ・歌曲賞 |
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| 1976 | 作曲賞、 音響賞、 編集賞 |
「ジョーズ」 |
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スティーヴン・スピルバーグ監督の名を世界に轟かせた、パニック・ホラーの原点。巨大な人食いザメと人間の死闘を描き、世界中で記録的な大ヒットとなった。姿を見せないサメの脅威を演出したジョン・ウィリアムズの音楽と、緊迫感を極限まで高めた巧みな編集が高く評価され、合計3部門を受賞した。
本作の成功は「ブッシュ・ホラー」という手法を確立。あえて怪物の姿を見せないことで観客の想像力を刺激し、生理的な恐怖を煽る演出は極めて革新的だった。劇中に流れるシンプルながらも不穏な旋律は、今なお「何かが迫りくる恐怖」の代名詞として語り継がれている。 主要部門では作品賞にノミネートされるなど、単なる娯楽映画の枠を超えた完成度を証明。サメの襲撃シーンだけでなく、海上で男たちが繰り広げる心理戦や人間ドラマとしての深みも、本作を不朽の傑作たらしめている要素である。 <ノミネート部門(★は受賞)> ・作品賞 ★編集賞 ★作曲賞(ジョン・ウィリアムズ) ★音響賞 |
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| 1974 | 脚色賞、 音響賞 |
「エクソシスト」 |
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ウィリアム・フリードキン監督が、少女に憑依した悪魔と神父の壮絶な戦いを描いた、悪魔憑き映画の金字塔。ホラー映画として史上初めて作品賞にノミネートされるという歴史を作った。徹底したリアリズムに基づいた演出と、当時としては画期的な特撮技術は、世界中の観客を恐怖のどん底に突き落とした。
ウィリアム・ピーター・ブラッティによる同名小説の脚色が極めて秀逸であり、脚色賞を受賞。さらに、観客の生理的な恐怖を煽る不気味な物音や唸り声を表現した音響技術も評価され、音響賞も獲得した。1970年代に巻き起こったオカルト・ブームの原点であり、現在もその衝撃は色褪せることがない。 主要部門を含む合計10部門にノミネートされるなど、ジャンル映画に対する過小評価を覆した先駆的な1作。単なる恐怖映画に留まらず、信仰や善悪の葛藤を描いた重厚な人間ドラマとしての完成度は、現在もホラー映画の最高峰として君臨し続けている。 <ノミネート部門(★は受賞)> ・作品賞 ・監督賞(ウィリアム・フリードキン) ・主演女優賞(エレン・バースティン) ・助演男優賞(ジェイソン・ミラー) ・助演女優賞(リンダ・ブレア) ★脚色賞(ウィリアム・ピーター・ブラッティ) ・撮影賞 ・編集賞 ・美術賞 ★音響賞 |
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| 1969 | 助演女優賞 | 「ローズマリーの赤ちゃん」 |
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静かに忍び寄るオカルトの恐怖を描いたモダン・ホラーの先駆的1作。ロマン・ポランスキー監督が、都会のマンションで何かに監視され、追い詰められていく妊婦の孤独と恐怖を冷徹な視線で活写した。主要2部門にノミネートされ、隣人役のルース・ゴードンが、親切の裏に底知れぬ不気味さを漂わせる怪演を見せ、助演女優賞を受賞した。
アイラ・レヴィンのベストセラー小説を原作に、日常の中に潜む異常性を緻密な演出で表現。直接的な凄惨な描写を抑えつつ、観客の想像力に訴えかける「見えない恐怖」は、後のホラー映画に多大な影響を与えた。特に、エンディングにおける絶望的な衝撃は、映画史に残る名シーンとして名高い。 都会的な洗練さと禍々しい儀式が同居する独特の世界観は、ジャンル映画の枠を超えた芸術性が認められた。本作の成功により、オカルト映画がA級の映画作品として正面から評価される道が切り拓かれた。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★助演女優賞(ルース・ゴードン) ・脚色賞(ロマン・ポランスキー) |
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| 1946 | 撮影賞 | 「ドリアン・グレイの肖像」 |
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オスカー・ワイルドの不朽の名作を映画化した、幻想的で耽美なゴシック・ホラー。永遠の若さを得た美青年ドリアンの内面の醜さが、肖像画にだけ現れていく恐怖を見事なカメラワークで描き出した。撮影を担当したハリー・ストラドリングによる、光と影を巧みに操った静謐な映像美が評価され、撮影賞を受賞した。
基本的には白黒映画だが、劇中に登場する肖像画の変化を強調するために、その部分だけテクニカラー(色彩映像)を用いるという当時としては極めて斬新な手法を採用。この視覚的な対比が、ドリアンの心身が腐敗していく様をより鮮烈に際立たせ、観客に強烈な視覚的衝撃を与えた。 後のホラーやサスペンス映画における「肖像画」を用いた恐怖演出の原点とも言える1作。若さと美への異常な執着、そして倫理観の崩壊を描いた物語は、時代を超えて語り継がれる普遍的な魅力を放っている。 <ノミネート部門(★は受賞)> ・助演女優賞(アンジェラ・ランズベリー) ★撮影賞(ハリー・ストラドリング) ・美術賞 |
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| 1932 | 主演男優賞 | 「ジキル博士とハイド氏」 |
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ロバート・ルイス・スティーヴンソンの古典的名作を、ルーベン・マムーリアン監督が革新的な映像技術で映画化した怪奇映画の傑作。善と悪の二面性を完璧に演じ分けたフレドリック・マーチが主演男優賞を受賞した。これは、ホラー映画として初のオスカー演技賞を獲得した歴史的な1作である。
最大の見どころは、ジキルがハイドへと変貌する驚異の変身シーン。赤色フィルターを段階的に操作する特殊な撮影技法により、ノーカットで人相が変化していく様をリアルに描き出し、当時の観客に強烈な衝撃を与えた。この演出は、特撮技術が未発達だった時代における画期的なアイデアとして今も高く評価されている。 19世紀ロンドンの霧深い街並みを再現した陰影の深い映像美も秀逸であり、撮影賞や脚色賞にもノミネート。人間の深層心理に潜む暴力性を冷徹に暴き出した物語は、後のジャンル映画における「内なる怪物」の表現に決定的な影響を与えた。 <ノミネート部門(★は受賞)> ★主演男優賞(フレドリック・マーチ) ・脚色賞 ・撮影賞 |
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